『風と雲の行く末』 玲奈様より
2007.8.27
この作品は玲奈様によって書かれました。
無断転載、二次使用、盗作等は固く禁じます。


CATCH ME IF YOU CAN
















風は捕まえることが出来ない

何かあってもそのまま擦り抜けてしまう

まるで自分から逃げるように

まるで自分を試すように

追い駆けることすら出来ぬ速さで





アンタの心はいつもどこにある?
そう思ってしまったのは今日だけじゃない。
一緒にいるはずなのに、話しているはずなのに、
どこか遠くに感じる。
いつになったらアンタを捕まえられる?










日が暮れかけた時間に門に佇む一人の男。





「お疲れさん」



木ノ葉からの依頼でテマリは任務に出ていた。
それを迎えるのはいつもの案内役であるシカマルだ。



「またお前か」

「なんだよ、俺じゃ悪りぃかよ」

「誰も悪いなんて言ってないだろう?」

「そんな感じじゃねぇか、たくっめんどくせー」

「ほら、そんなことより火影様へ報告だ」



嫌味を言ったかと思えば、今度は淡々とした様子でシカマルの横を通り過ぎる。





いつもこうだ。
何かしら任務、弟、里の話しかしない。
自分のこと、俺に関すること、そんなものは話さない。
どこか距離を置いたテマリの様子。
別に話してほしいとは思わない。
けど、時折に窺わせる切なく、不安な瞳。
一緒にいても、距離を置く心。
何かしらと距離を置こうとするせいでか、テマリは俺から離れようとする。
まるで逃げるかのように。
まるで自分がどう出るか試すかのように。
そんな行動されて何も思わない訳ねぇだろ?



「おい」

「なんだ?」



一人でスタスタと歩いていってしまうテマリを追い駆け、隣に肩を並べてシカマルも歩き出した。



「なんで「そういえばこの前、珍しくカンクロウが朝食を作ってな」



まただ。
自分が今思っていることを質問する時、いつもこうやって誤魔化される。
けど、いつも俺はテマリのために振られた話にのるんだ。



「で?そのカンクロウがどうかしたのかよ?」




ああ―――――と話が続く。
テマリはその時のことを思い出したのか、クスクスと笑っていて。
シカマルはテマリの話を聞きながらいつも以上に眉間に皺を寄せ、苦笑していた。
心に残る蟠りを二人は抱えながら火影のもとへ向かった。










火影室を出た頃には夕方になっていた。
二人で他愛の無い話をしながら、テマリが泊まる宿へ向かう。



「じゃ、ここでいいぞ」

「ああ」



いつも通り。
いつも通りにすればいい。
でも、本当にこのままでいいのか?



テマリが背を向けて歩き出し、宿に入るところまで来た時。
シカマルは咄嗟にテマリの腕を掴んだ。
テマリはぎゅっと掴まれた腕を一見しシカマル見る。


シカマルは自分でも驚いていた。
咄嗟に出た行動。
でも、それが本当の気持ちだ。


なぜ、テマリは自分から距離を置くのか。
それは両思いだと分かった時から始まった。
初めは短かった距離が長い距離になって今に至る。
これ以上シカマルは距離を置きたくはなかったのだ。





「あ、いや悪りぃ・・・」



自分でも驚いた行動に思考回路がついて行けない。
それほどまでに今のシカマルは戸惑っていた。
それをテマリは一見し、ふっと笑った。



「やっとだな・・・」

「あ?」



小さく紡いだテマリの声はシカマルには届かない。



「やっとお前の気持ちが分かった」



その顔はとても穏やかで、シカマルは見惚れた。



「どういうことだよ?」

「お前は私のことは一切訊かない。
そしてこうして別れる時、お前は何もしてこない。
一緒にいても何を考えているか分からない。
お前は雲のように掴み所がない男だった。
だから、本当にお前は私が好きなのか分からなくなってな」



テマリの言いたいことが、やっと分かった。



「だから、わざと距離を置いて、試したって訳か?」

「そうだ」



それを聞いてシカマルは今まで悩んでいた何もかもが吹っ切れた。
今まで悩んでいたことが馬鹿に思える。



「アンタ・・・馬鹿だろ・・・・・」

「な、馬鹿とはなんだ!」

「それのせいで俺がどれだけ悩んだと思ってんだよ」

「知るか」



いつものように淡々と、でもどこか穏やかな声でテマリは紡いだ。
シカマルは溜め息を零し、テマリの言葉に続く。



「アンタ、いつも距離をおいて風みたいに擦り抜けていっちまう。
初めもそれで悩んでたっつうのに余計に酷くさせんなよな」

「それはすまなかった。でも、まさか同じようなことで悩んでたなんてな、結構笑えるぞ」

「ま、とにかくこれで問題解決だな。やっとお前を捕まえたぜ?」

「それはこっちの台詞だ」






お互いの問題が解決した頃にはいつの間にか夜になっていた。
満天の星達だけがその後の二人の情事を知る。










END.


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玲奈さんの400HITにリクエストさせて頂きました!

もうもう、玲奈さんは私が以前楽しみにしていたこととか、作品のテーマが好きですぅ〜みたいな、どうしようもない、叫び?を覚えていてくださって、それに応えてくださったんですよ〜♪もう、本当に嬉しいです。

リクエストにいくつかお題を差し上げてお好きなものを・・・とお伝えしていたのですが、どれになるかわくわくしてました。
『CATH ME 〜』は皆さんご存知の?映画のタイトル。(実は観てません・・・。)書いていただいたお話、なんかつきあって2,3ケ月頃のシカテマには、こんな展開ありそうだわ〜、と、ニヤニヤしながら、読んじゃいました。ありそうじゃないですか?腹の探りあいみたいな・・・(って私が書くと何故か下品・・・。)

玲奈さん、またセリフがいいんですよ。どこからこんな言葉を言わせてしまうのかしら!!といつも感心。今回はお礼メールにも書かせて頂いたんですが、シカマルの『アンタ・・・馬鹿だろ・・・』です。言われてみたい。(あ・・・ホントの馬鹿には言わないか・・・。)

玲奈さん!素敵な作品ありがとうございます。大切にします!!

2007.8.29 りく