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collaboration : comedy もうひとつのシンデレラストーリー?!

〜Cendrillon ou La Petite pantoufle de verre〜


■ Cendrillon 06. シンデレラの場合 story
   by [MOJITO]☆りく

             タールさんが描いてくださった素晴らしい絵から生まれて来たストーリーです。
             笑ってくださる方のみ、閲覧下さいませ!!







「ちょ、ちょい待って下さいよ。・・・綱手様は、何の役回りっすか?」

埒が明かねぇから、このとんでもない騒動の立役者であろう人に、直球をぶつけてみることにした。



「あたし?あたしは、魔法使いの・・・お姉さんだ。」



(お、お姉さん!?)

その返答に、唖然としたのは俺だけじゃねぇはずだ。

なぜなら、先程までの喧騒は何処へやら・・・、執務室は水を打ったような静けさに包まれた。

それは次第に、不気味な沈黙と息苦しい空気へと、変化していく。







「ぶっ」

静寂を破ったのは、アスマ姉さん・・・じゃねぇ、アスマだった。

「アスマ、馬鹿。」

紅先生が慌てて諌めたが、誰もが手遅れであることに気づいている。

怒気が煙を上げ、執務室を充満する、声なき怒号を感じたからだ。

一瞬の間。

「・・・アスマ、なんだい、今の?」

地獄の底から湧き上がるような、ひどく低く、恐ろしい声が、響いた。

アスマの顔は、カカシ先生のドレスの色を写したかのようで、一気に凍りつく。

「い、いや、火影様、コレは、その。」

「問答無用!!」

声すらその武器であるかのような力強さを持ち、綱手様が拳にチャクラを練り始める気配がビリビリと感じられる。

「アスマ、まずい!」

「ああ。」

その左フックが飛んでくる直前、アスマとカカシ先生の姿は、もうそこにはなかった。

空振りした拳の風圧で、壁が鈍い音を立てて軋み、しなり、パラパラと塗料が剥げ落ちる音がする。

「ちぃっ。あいつら、いい度胸だ。あたしをなめんじゃないよ。」

叫び声と共に、綱手様は窓を叩き割り、派手に飛び出した。



ー・・・おいおい、木ノ葉の里が、崩壊すんじゃねぇの?



紅先生も、「まったくアスマって余計なことしちゃうのよ。」そんな小言を言いながら、後を追う。



埃舞い散る執務室には、俺と、王子・・・ならぬ、テマリだけが残された。




ーなんつうか・・・。

奇妙な仮装の面々がいた時は、この姿もまだ、違和感を感じなかったが、

こうして2人きりになると、俺は逃げたくなるくらいの恥ずかしさに見舞われた。

テマリは、まだいい。いや、男装の麗人と言っていいほど、その姿は堂に入ってる。

ところが、俺はどうだ?

なんで、淡い恋心を抱いている女を前に、こんなとんちきな格好、してんだよ。

しかも、下半身が落ちつかねぇ。なんでこんなにスースーするんだ?女の服ってのは。

それにさっきから、テマリの視線が気になって、ヒナタみたいにモジモジしてるし、俺。

ああ・・・、情けねぇ。

「ふうん。本当によく似合ってるなぁ・・・シンデレラ。」

テマリの口元は、奇妙に歪んでいる。

好奇心に満ちた瞳をキラキラさせて、一途に見つめられると、妙な気持ちになってくる。

「へ、変なこと、言うなよ。」

俺は、じりじりとにじり寄ってくるテマリから逃れるように、後ずさった。

その瞬間、ヒールがドレスの裾を踏み、身体がよろめいた。

テマリがとっさに手を伸ばし、俺もその手を取ったのだが、

女装しているせいで、尚更俺のほうが体が重い。

重力には勝てず、そのまま共に床に倒れこんだ。




不思議と痛みは感じない。やたらとレースのついたドレスがクッションになったのか?

んな訳ねぇよな。あれ?コルセット締められたときは、ものすごく具合が悪くなったはずなのに。




「大丈夫か?奈良?」

頭上から降るテマリの声。

「・・・ああ、悪ぃ・・平気だ。」

顔を上げ、目が合い、さっき感じた妙な気持ちが蘇った。

俺に跨るように、膝立ちした彼女。じっと俺を見下ろしている。

・・・なんつぅか、女が男に押し倒された時の気持ちって、こんな、なのか?

テマリの影に覆われ、鼓動が高鳴る。

気づけば、脅えるように胸元に手をやっている自分。・・・本当に吐き気がした。


悪夢を振り払うように首を振り、テマリの差し伸べた手をとり、身体を起こそうとした、その時だった。



「綱手のばぁちゃん、こっちの準備はばっちりだってよ!・・・ってアレ?ばぁちゃん?」


乱暴にドアを開け、大声で入ってきたのは、馬の着ぐるみ姿のナルトと、後ろにもう1人。

あれは・・・?

「おほぉ〜、シカマル、何やってるだってばよ!・・・って、イテーっ!我愛羅、何すんだってばよっ!」

俺をからかうナルトを押しのけて、飛び出してきたもう一頭の馬が、異常なチャクラを放っている。

馬ー!?つうか、ひょうたん背負った馬なんて、何処の世界にいるんだよ!?


「・・・お前、そんな妙な格好をして、テマリに何してる。」

馬・・・もとい、被り物を脱いで、恐ろしい形相で俺を睨みつけている、テマリの弟、我愛羅。

「はあ!? (いや、妙な格好はお互い様だろ!?)」

何してるって・・・、どう見たってこれは、俺が、テマリに、何かされそうな状況だろーが!

・・・いや、されてねぇけど・・。

「我愛羅、落ち着け!」

テマリは慌てて立ち上がり、弟に駆け寄る。

「お、おい、ちょい待てって。話を・・・」

慣れないドレスのせいで、なかなか立ち上がることの出来ない俺に向かって、無常にも奴は印を結び始める。

「砂縛柩っ!!」

術の発動と同時に、ナルトとテマリが我愛羅に飛び掛った・・・が、手遅れだった。

俺の身体を砂が取り巻く。


これじゃ、灰かぶり姫じゃなくて、砂かぶり姫だろ・・・てか、俺は姫じゃねぇー!!

なんなんだよ、これ!

こんな結末のシンデレラってありか?

誰かーー!!







「ううわぉっ!」

身を起こした途端、何かが崩れて、床に滑り落ちる音が、した。

ーここは・・・俺の部屋?

部屋は薄暗く、目が慣れるまで多少の時間を要した。

ゆっくりと床へと脚を降ろすと、硬いものが指先に触れる。

目を落とせば、分厚い本が落ちている。その周りに散らばる原稿用紙。

ーああ、そうだ。

数日前、火影に呼ばれ、アカデミーの年少向け寸劇用の脚本を、書くように言われたんだ。

「今年は、お前達の代の番だからな。

 あいつらの中で、こんなこと出来るのは、お前ぐらいしかいないだろ?」

そうして渡された、原稿用紙と、この片手で持つにはぶ厚く重い本。

俺は、それをやりながらつい、寝ちまって・・・。

あのコルセットの息苦しさは、この本の重さか?



俺は、両手で本を持ち上げる。


背表紙は、『世界童話全集』。

床の原稿用紙のタイトルは、『シンデレラ』。


・・・なる・・・ほどね。

あの、面倒くせぇ夢の正体は、これだったのか・・・。



それにしても、・・・ひでぇ、夢。






        


fin.



mimsさんー!あわわ・・すごく遅くなっちゃってごめんなさい。色々考えた挙句、結局2度目の夢オチ(笑)
しかも、りく的にコメディには、砂の兄弟ってのがあって、我愛羅、登場させちゃいましたー!
こんな終わり方で良かったか、どうか・・・(泣)
体調のよろしい時に、編集してくださいまし。よろしくお願いします!!
とりあえず、mimsさんが前に送ってくださったテンプレ、そのまま使わせて頂いてます!
ダメだし、OKです〜。

2007/12/10 . MOJITO☆りく.


■思い出■
久々に読んだ―。ここまでお付き合い下さった方、本当にありがとうございます!!こんな文章、書いてたんだなぁ、私。コメディだ!!って意識して書くと、もうベタな方にしか行けなくて・・・アワワ。でも大好きなナル我コンビも出せたし、ここのシカマルも、りくの中ではもっともシカに近いシカなんだっ(意味の無い言い切りっ)って思うと、最近、りくの書くシカマルはちょっとあちこちにブレてる気がします。

冒頭にも書いたのですが、一緒にコラボして下さったみむサン(mimsさん)たーるさんは今はシカテマではないんですけれど、活躍されていらっしゃいます。

みむサンは当時から鹿愛が深かったのですが、愛が高じて?その後ドリーム界で大活躍されて(ドリーム好きな方はご存知ですよね)、今は、BL作家さんもされてますよ〜。先日、メルやりとりをさせて頂いたときにも、萌とそれを形にされるバイタリティはご健在で、お身体を心配しつつも、あの頃と変わらない楽しい文章に元気を頂きました!!インテで本を出されるくらい、すごい!!!

mimsさんのサイト m.a./mon.amour(アスシカ他BL・ドリーム)

たーるさんは、今はゾロサンサイトさんをされてます。とてもお忙しそうなんですが、絵も文も書かれる才能溢れるお嬢さまです。絵はtreasureでもご覧頂けますよ〜。文もね、とても繊細な表現が素敵なんです。

たーるさんのサイト 海底ブルー(ゾロサン)

お2人には本当にお世話になりました。
昔も今も大好きです。生息地は違うけれども、ネットに繋げば、お2人に会えることが嬉しいです。

2009.9.22 りく
(あれ、鹿誕??)









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